栗・ハチ・うすの助け

 





猿蟹合戦の原作は、栗・ハチ・うすの他に牛糞もいるそうなのですが、わたしが見た本では出てきたことはないですね。
あくまで、余談なのですが。

さて、子ども会書記のわたし。
出来るだけ、サル気質のかおりさんと、かかわらないように、目立たず静かに行動することを心がけてきた。

けれど、こうなってはかかわらない訳にもいかない。
比較的、書記は楽なお仕事。
配布する書類の土台は、データごと引き継ぎされるので、日にちや名前を変える程度なので、それほど困難ではありません。

年度初め、役員名の変更と、会員の住所録の準備が大変ですが、それを終えてしまったので、副会長のお仕事がまわってくるのは予想していました。

けれど・・・。
ここまで馬鹿にされるとは思ってもみませんでした。

とある平日の昼間、かおりさんが用事があるので、変わりにブロック会議に出席するように頼まれたのです。
その日は、高校時代の友人たちと半年に一度の食事会の約束をし、楽しみにもしていたのですが、役員をしている以上仕方がありません。
10時からの会議は予定よりかなり早く終わり、ランチには間に合いませんでしたが、デザートの間おしゃべりが出来るのでは、と、いつものお店にかけつけたのです。
ようやく友人たちと合流して、楽しい時間を、と思った瞬間、目に入ったのが、いくつかのテーブルをはさんだ先の席で楽しくランチのあとのデザートを待つかおりさんの姿が。

信じられない。
席にもつかず、呆然としているわたしの姿を見つけ、見下すような笑顔。
「思ったより早く終わったんだ。」

思わず、
「かおりさん、用事があったんじゃ?」
と、口に出してしまった。

しまった、と、焦るわたしに、焦ることのないかおりさん。
「ランチの約束してたから。」

はっ?
それに答えることも出来ず、席につくと、そのテーブルの方から、
“感じ悪いね・・・。”
と、聞こえるように会話しているのです。
わたしは自分は悪くないはずなのに、肩身の狭い思いをし、身が縮まる思いだったのです。

わたしが予定のある副会長の変わりに会議に出なきゃいけないから、とランチをキャンセルしていたので、友人の一人がピンときたのでしょう。

迷いもせず、かおりさんのテーブルに行き、
「わたしたちは半年も前からこの日を楽しみにして、約束もしていたの。その約束をキャンセルまでして、会議に出席した子の、文句をいうのだけはやめてもらえる?」

かっこいい。
しーんとした席を後にして、テーブルに戻り、ちょうど届いたデザートを、
「いただきまーす♪」
と、何食わぬ顔で食べ始めた。

この強さがわたしにもあればなぁ。
わたしはこの友人に、すごく助けられ、救われた気持ちでした。

栗・ハチ・うす、3人分の助けにも相当するくらいです。